まるで飴釉薬のような光沢感のある仕上がり
修理中、数ある陶器の中で肌が褐色をした飴釉を用いた作品に出合います。飴釉は艶があり、ところどころ色が透けて奥行きのある釉薬です。実は漆の中にその飴釉と似た艶や透け具合を出せる漆があります。
「朱合い漆艶あり」という漆です。赤や藍色、黄色など鮮やかな色漆もいいですが
ここでは「深堀り金継ぎ 漆直し編」では朱合い漆艶ありを使った方法をお伝えします。
(色漆も基本塗り方などは同じです。)
① 使う漆の乾く早さを確認します。
漆仕上げをする2日前に使用する漆をガラス版の上に塗ります。塗り厚は実際に塗る厚みをイメージして2cm×2cm程塗り使用する漆の乾く早さを確認します。【目安は】漆はどの季節でも塗り終わりから24時間くらいで表面がホコリ等つかない程度
②【塗り方 楕円面を塗る想定】
1.全体的に漆を粗塗りします。2.塗る距離が短い横方向に筆を動かし塗り厚を平均にします。3.仕上げ塗りは距離が長い方向で仕上げます。4.最後に筆をおいた部分の輪郭を軽くなでて終わります。
作業後ガラス板の漆はそのままにしておきます。漆の乾き具合を見るのはガラス板の漆で確認します。
※参考写真
漆器作りの場合漆を塗り乾かす際に一定の時間がたつと半回転する機械を使い、漆が一定方向に垂れるのを防ぎながらゆっくりと乾かします。
この乾かし方と同様に陶磁器に塗った漆も半回転させる必要があります。
③【手返し】
陶磁器などにする漆直しもそれと同様に漆が一定方向に垂れるのを防ぎながら乾かします。
陶磁器の場合は機械が使えませんので代わりに手で裏返したり横にしたりします。
裏返したりするときは写真の様に木の台などを使用します。
特に欠けた部分など面を塗り乾かすときは漆が四方に流れるため角度が重要になります。
下の写真を参考
線の場合は漆が流れる方向は縦だけなので一定期間器を上下入れ替えるだけで大丈夫です。
その時、器の縁の漆がテーブルにつかないように割りばし等で浮かしてください。
※写真の様に木の角材などを利用してお皿の角度を変えることもできます
④手返しのタイミング、完成~使用まで
塗り始めは漆も柔らかく5分ほど放置しておいただけで下に垂れてきます。そのため塗り始めから数時間はは5分~8分間隔で頻繁に手返しが必要です。これをよく忘れてしまうためタイマーなど使うと便利です。
器の側面に塗った場合器の角度を調節して塗り面がなるべく水平になるようにします
24時間ほどで乾く漆は塗り始めから6時間~8時間程経つとうるしが徐々に硬くなり垂れにくくなります。
そのため塗り始めから2時間ほど経ったら手返しの感覚を15分~20分位と間隔をあけても大丈夫です。
6時間ほど経過後、漆が垂れなくなったら手返しは必要ないです。塗り面をなるべく水平にした状態で上から塗り面にホコリ等がつかないようにうつぶせにした状態で乾かします。
そのまま二日ほど放置してから三日ほどムロなどに入れ硬化させます。その後はムロから出して2週間ほど経ってから使用してください。