どちらが良くて悪いというものではない。
金継ぎの作業では欠けた部分を盛り上げ欠けた部分を周りの面と合わせる作業が必要です。
その作業で使われるパテ状の漆に さび漆 と こくそ漆 があります
金継ぎセットや金継ぎの説明本などにはよく「こくそ漆」が使われています。
こくそ漆を簡単に説明すると麦漆に木の粉を入れて作る表現が正しいかわかりませんが粘土状の漆です。
質問でさび漆というカケを埋める漆があるようですが、こくそ漆との違いは何ですか?という質問がたまに来ます。
ここでは二つの漆の特徴と用途について説明します。
金継ぎの作業は漆器作りの各工程の寄せ集めです。
ということで漆器の工程を説明します。読み終わりになぜこくそ漆を使わないかがわかると思います。
漆器作りの作業は 木地の成形から始まります。成形後木地の上に赤や黒などの漆を直接塗るのではなく下地というパテ状の漆で木地の上に漆の肉付け作業を行います。ここで使われるのが こくそ漆 と さび漆です
例えば木で形を作る工程時に内側の角に丸みをつけたいときや、隙間を埋めるときに使う漆は厚塗りが出来るこくそ漆を使います。木と木を接着するときに隙間が少し出来ても漆に粘り気がありまた、漆の中に木の繊維が入っているので木と漆の間に隙間が生じにくく強力に接着できます。こくそ漆は粒子が粗いため厚塗りが可能です。そのため木の節や割れ等、その部分を埋めるための漆としても使われます。
このようにこくそ漆は形状を変える為に使ったり、木の粗を隠すために漆を厚く塗る場面で使われる漆です。こくそ漆は木と漆で作られているため乾燥後刃物で削っても刃物が傷みにくいので刃物での成形もしやすいです。
次にさび漆の説明です。木地とこくそ漆で成形した器の上に塗るのがさび漆です。錆漆は生漆と地の粉と砥の粉を混ぜて作る粘土状の漆です。(木の粉は使いません)
地の粉とは珪藻土を焼き粉にしたものです。粗目、中目、細目と主に3種類の粒の粗さがあります。
(産地により呼び名は変わります)
一番初めに塗るのは粗目次に中目最後に細目と上に塗り重ねられていくにつれ粒子が細かくなります。
木の粉が入っていない分厚く塗れませんが、きめが細かく細かい成形ができ、ヘラで塗りやすいパテ状の漆です。さび漆を塗る意味は器を丈夫にすることです。多少の凹凸は修正できますが基本、木地とこくそ漆で成形した物の形を崩さず塗り重ねます
このように下地で使われるこくそ漆とさび漆は役割が違います。
二つの漆を使い分けてきれいに早く仕上げましょう!